ドメニコ・ジャンフラーテ / Domenico Gianfrate
PT アートディレクター
1971年、イタリア南部の街プーリア州ターラント生まれ。12歳から地元のサッカーチームで活躍し、当時セリエAに昇格していたUSクレモネーゼに所属。22歳で引退すると、ファッションの道へと転身。独立してショールームを開き、南イタリア有数のエージェントに成長を遂げる。ファッションブロガーの草分け的存在であるスコット・シューマンに撮影されたことから名前が知られるようになり、毎シーズンのピッティ・イマージネ・ウオモでファッションスナップの常連になる。国内外のファッションメディアに取り上げられること多数。2016年にPT01、PT05のディレクターに招聘された。
──どんな家庭環境で育ちましたか?
父親が会社員のごく普通の家庭でした。ただ、母親が若いころ自宅でサルタ(仕立て職人)をしていたことがあり、ファッションとのつながりが少なからずあったと思います。
──ファッションを志したきっかけを教えてください。
幼いころから好きなことがふたつありました。ひとつはカルチョ(サッカー)で、もうひとつがファッションです。ファッションは、母親が仕立ての仕事をしていた関係で、“こういう服がほしい”と彼女にお願いして、好きな服をつくってもらっていました。ある意味、ス・ミズーラですよね。ほかでは買えないユニークなものばかり着ていましたから(笑)。
──セリエAのプロ選手から、ファッション業界に転身したきっかけは何だったのですか?
細かい部分は言えないのでご想像にお任せしますが、ちょっとヤンチャだったせいかもしれません(苦笑)。簡単に説明すると、引退後、少しモデル業をしてから、ファッションエージェントで働くようになり、その1年後には独立して南イタリアを中心としたディストリビューターとしてショールーム経営に乗り出しました。それと同時に、数社のブランドコンサルティングなどをしていたこともあり、PTから声がかかったんでしょう。
──ファッションはどこで学んだのですか?
学校などで専門的な知識を学んだことはありません。でも、ずっと好きだったので、いろいろ見て、聞いて、感じて、考えて、ファッションに対するセンスが培われていったんだと思います。音楽やアート、映画、もちろん日常のなかからも、いつもインスピレーションを得ています。
──この人はお洒落だという人を教えてください。
ジャンニ・アニェッリ(ファッショニスタとして有名なフィアットの元名誉会長)や、マルチェロ・マストロヤンニ、アラン・ドロンといった往年の映画スターからの影響が大きいと思います。彼らは皆、エレガントな雰囲気がありながら、ルールに則った正統派というよりも、どこか自分らしいリラックスした装いを好んでいました。私もそういったスタイルを参考にして、クラシック×スポーティなど、異なるテイストをミックスするようにしています。普段多いのは、サルトリアーレとストリートウェアの組み合わせです。
──あなたにとって、ドレスクロージングはどんな存在ですか?
ファッションはジャンルを問わず、着る人が楽しめることが大前提です。ドレスクロージングだからといって難しく考える必要はなく、私自身も自分らしい自然体のスタイルでいられることを第一に心がけています。自分なりの特別なルールというものもなく、コーディネイトの際は“いいな”と思った直感に従います。とはいえ、全体のバランスはとても重要です。好きな服をミックスしながらボリュームを見て、細かな部分はあとで決めていきます。この秋は1970年代スタイルのムードが高まっており、着丈が長めで、肩が構築的なつくりのジャケットが増え、パンツでは少しゆとりのあるシルエットが注目されています。今はそういったバランスが気分なんだと思います。
──バランスはそのときどきで変わるものなのでしょうか?
各々のスタイルは、時代に応じてアップデートをすることが必要です。私の場合は仕事柄、常に新しい情報に触れているので、“今日はこんなふうに着てみよう”とすぐに思いつきますが、同じ服を着続けていると、年齢を重ねるにつれてスタイルが劣化してしまいます。そうならないためにも時代の潮流に目を配り、本来の“自分らしい”スタイルに、そのときどきのムードをミックスしていくのがいいでしょう。
──普段どれくらいの頻度でドレスクロージングを身に着けますか?
スケジュールによって変わりますが、だいたい週に2〜3回でしょうか。服をエレガントに着こなすということは、ソーシャル的な一面もあると思います。例えば、友人の家にディナーに誘われたとしましょう。その会にふさわしい服を選ぶことには、相手に対して敬意を表す意味も含まれます。そうしないと、場の雰囲気を壊してしまうことがありますからね。
──トゥモローランドとの出合いとその印象を聞かせてください。
8〜9年前に来日したとき、トゥモローランド渋谷本店を訪れたのが最初でした。まだPTのアートディレクターになる前でしたが、その際、クラシックとファッション性のあるモードとのバランスが非常に優れていたのが、強烈な印象として思い出に残っています。とても刺激的な品揃えで、以来、日本に来るたびに何か買って帰っています。これは余談ですが、数年前の来日時にPT JAPANの大事なパーティーに出席するためのタキシードを入れたトランクがロストバゲージしてしまったんです。そのとき、急遽フォーマルウエアを用意してくれて、ピンチを救ってくれたのがトゥモローランドでした(笑)。
──今日、着用したブレザーはどうでしたか?
最近、個人的に金ボタンがブームなこともあり、ひと目見て素敵だと思いました。素材が柔らかく、着心地もすごく快適。今回はPT05のデニムを合わせましたが、こちらはトゥモローランド別注モデルで、クラシックの安心感とコンテンポラリーな雰囲気を同時に味わえるのがポイントです。Tシャツの裾をジーンズにタックインしたのも、自分なりのこだわり。裾を一度全部入れてから、バランスを見ながら少しずつ外に出していき、最終的に無造作な感じに仕上げるんです。でも、そうした計算は絶対に見破られてはいけません(笑)。このコーディネイトは、どちらかというと週末に友人と飲みに行くとか、リラックスして夜に出かけるイメージですね。
──もう一方のタイドアップしたほうのスタイルはどうでしょう?
ミーティングなど、ある程度かしこまった雰囲気が求められるけれど、そこまでカッチリしなくてもいい場面をイメージしました。PT01のパンツを合わせましたが、ポイントはシャツ&タイ。特に、ベージュとネイビーの掛け合わせが好きで、シャツはベージュ、タイはブラウン×ネイビーのものを選びました。シャツの襟元にはカラークリップを加え、アクセントになるようにしました。
──パンツ専業ブランドのディレクターとして聞きたいのですが、コーディネイトはどこから組み立てますか?
もちろん、パンツです(笑)。今はPTのアートディレクターをしているので、そう言わざるを得ませんが、そういった事情を抜きにしてもパンツのボリューム感は非常に大事だと思います。私自身、パンツを決めたら、あとはバランスをとるためにトップスとそれ以外を決めるので、全体をいちばん左右する部分だと認識しています。もちろん、スーツのときは別ですよ(笑)。こう見えて、スーツは結構クラシックなタイプが好きなんです。パンツで遊ぶのは、こうしたミックススタイルのときですね。